[4]【地域包括ケア病棟編】医療保険の限界が「本当に自分がやりたい仕事」発見の契機に
みなさんこんにちは、AOYAMA STYLE(アオヤマスタイル)の青山です。
都内の総合病院などで理学療法士として勤務した後、2020年、練馬・豊島園の地でAOYAMA STYLEを開業しました。
私の理学療法士としての経験と、”志(こころざし)”を語らせていただく「私の履歴書」シリーズ4回目の今回は、「地域包括ケア病棟勤務時代」と「外来リハビリ時代」に得た”気づき”を語らせていただきます。
とある都内の総合病院にて内科病棟勤務3年、リハビリ専門病棟3年、訪問リハビリ3年の職務を経た私が最後にたどり着いたのは、地域包括ケア病棟と外来リハビリでの3年間でした。
「地域包括ケア病棟」……そう聞いて、どういう場所か、すぐにピンと来る方のほうが少ないかもしれませんね。
実際、地域包括ケア病棟の定義はとても複雑で、説明が難しいのです。厚労省も表向きは綺麗なことを言っていますが、実際は『なんでもあり』の病棟という印象です。
基本的にはどんな患者さんも受け入れますが、60日間しか入院させることができません。「その間に理学療法士さん、今後のことはなんとかしてください!」と丸投げされている印象のある病棟です。
なので、本当に様々な理由で患者さんが入院してくるんですね。
- 急性期病院の期限が切れたので入院
- リハビリが適応しうる疾患ではない のに、家族のリハビリ希望があり入院
- 家がゴミ屋敷で住めないのでとりあえず入院
- 家族の介護疲れで入院
- 家で家族が看れなくなったので入院
などなど……。
私が地域包括ケア病棟で勤務をはじめた時には、「入院」についてのイメージが大きく変わっていくのがわかりました。
「身体のどこかが悪くなったときに、治療しにくる場所=病院」というイメージを当初は持っていましたが、この病棟に入院してくる方々は「そういうわけでもない」。
でも、患者さんには確実に入院する、もしくはご家族に患者さんには入院してもらうだけの必要性があって、病院も彼らを受け入れています。
しかし、それらは世間一般で認知されている入院理由とはかなり違う基準であり、そうやって入院してきた患者さんを受け入れている病棟での困難なリハビリ作業に従事することになりました。
地域包括ケア病棟での業務
「そんな病棟でのリハビリって、どういうことをするの?」って当然疑問に思われるでしょうが、基本的には「入院中の廃用症候群の予防」が目的となります。
廃用症候群とは、安静状態が長期に渡って続く事によって起こる、さまざまな心身の機能低下等を指す。生活不活発病とも呼ばれる。特に病床で寝たきり状態でいることによって起こる症状が多い。
wikipedia/『廃用症候群』
いろんな理由で、様々な方がこの病棟に入院してきます。『社会的理由での入院』って言ったほうがいいのかなぁ、と思うようなケースも多々ありました。60日の入院中に患者さんを「廃用させてはダメ」=「身体を弱らせてはいけない」ため「だけ」のリハビリも行います。
もちろんリハビリ目的で入院してくる患者さんもいらっしゃいます。しかし、この地域包括ケア病棟に入院する患者さんは、基本的にはリハビリ適応疾患ではない……つまり、リハビリを行ったところで、改善が期待できるわけでもない患者さんなのです。当然ながら、リハビリも難渋します。
ここで勤務中の私は『そもそもリハビリってなんなんだろう』と真剣に悩むことになりました。
- ご家族が希望なさってはいるが、当の患者さんからは求められていないリハビリ。
- 施設基準をクリアするため、時間計算して割り振られたから行わねばならないリハビリ。
- この病棟で60日過ごしたあと、次の転院先までにかろうじて身体機能をつなぎとめるためだけに行われるリハビリ。
などなど……
たしかにどれもこれも大切なリハビリには変わりがありません。しかし、仕事に自分の熱い想いをぶつけられないことが多かったことがきっかけで、逆に「本当に自分がやりたい仕事とは何か」や「自分や理学療法士の真の存在意義、使命感」などが明確になってきた時期でもありますね。
外来リハビリでの業務
この病棟での仕事と並行し「外来リハビリ」の仕事も兼任していました。
こちらは、退院された患者さんに対し、退院後のケアという位置付けで行う仕事です。ただ、医療保険で行うリハビリには「リハビリ期限」というものがあります。
例えば、
脳血管障害の場合 | 発症から180日以内 |
整形疾患の場合 | 発症あるいはオペ後から90日以内 |
というような、おおまかな期限です。
医療費削減を方針に掲げている政府としては、国の医療費は削減方向に年々進んでおり、施設基準を満たしきれない病院に支払われる診療報酬も年々減ってきています。
医療やリハビリを本当に必要としている方々がいる一方、病気が完治しているのに、つまり自己努力で良くなっていけるのに、あるいはもう医療やリハビリは必要さえないのに、医療保険で安くできるからとりあえず受けておこう、通い続けようといった方も実際多いのです。
外来に通われる患者さんも期限内にしっかりと卒業されていく方がいらっしゃる反面、5年、10年とかなりの長期にわたって、ただ漫然と通われる患者さんもいらっしゃいました。
リハビリが本当にまだ必要か、必要ではないかという境界線もかなり曖昧なケースが多いため、病院側も「まだ通いたい」という方を受け入れざるをえないのでした。
こうした繰り返しが、医療費を多いに圧迫しているのは事実で、一律で医療費削減に国が舵をきってしまったという側面もありますね。
しかし、診療報酬の改定に伴い、リハビリ期限が明確になることで、このようなケースは減らせたかもしれませんが、本当にリハビリが長期にわたって必要な方のリハビリ機会が切り捨てられてしまったという側面もあるのが困った事実です。
今回、私がみなさんに伝えたいのは、「医療保険に頼るにはもはや限界がある」ということです。限られた財源の中で、医療費削減の方針が出ることは当然で、国はあなたを完全には守ってはくれないからです。
そして、「リハビリはもちろん、あらゆる医療技術には限界があり、すべてを依存することは危うい」という事実についてもお話せねばならないと考えています。
では、そんな状況下で私が理学療法士として貢献できることは何なんだろう。
そのことについて、ずっと私は頭をひねってきました。
必要な方に必要な医療を提供できるように取り組むのはもちろんのこと、一人でも多くの方に、医療保険に頼らないでも済むよう、そもそも診断名がつくような重い病気にならないようにするよう、自分の経験や技術を活かしていくことだと感じています。
そもそも、最初から病気にならないに越したことはないのです。
多くの方の「未病をサポートしたい」という思い
たしかに世の中には防ぎようのない病気もたくさんあります。一方、様々な患者さんのカルテを見るに、未然に防げたであろう生活習慣がわざわいして起きた病気もたくさんあります。
理学療法士としての知識・技術・経験を、まだ体調不良の時点の患者さんにお伝えすることで、その方たちが病気で苦しむようになる前に、そして健康を失い、坂道を転げ落ちるように人生のクオリティが下がってしまう前に、不幸をなんとか食い止めたい。健康で元気に生きていただきたい。
長い人生の残り時間を、楽しく生活していただきたいのです。またそんなあなたの健やかな姿は、ご家族や周りの方を、幸せにもするのです。
親御さんの介護で心身ともにボロボロになった娘さんの健康に理学療法士として貢献したこともありました。すると介護が楽になっただけでなく、親御さんに笑顔が戻ったことがありました。
育児で疲弊してしまったママさんの健康に理学療法士として貢献することで、ふたたび楽しく育児に取り組めるようになった彼女たちの姿も見てきました。そして、笑顔になる子どもたちやパパの姿も……。
私事ですが、自分の妻を施術していく中、奥さんがより元気にパワフルになると、家の中がとても明るくなり、より幸せを噛み締めている自分がいることに気づきました。
すべての健康は幸福と結びついているのです。健康と幸福、その2つの要素がメビウスの輪のように循環し、巡り合っている社会を作りたい。その輪の中心に理学療法士として生きていたいという強い思いが、ママサロン開業につながり、今日の私を支える原動力ともなっています。
ママサロンアオヤマのシンプルな「原理原則」
「幸福」の定義は人それぞれです。
「健康だからこそ得られるあなたの幸せ」だけでなく、そのことが「周囲の方への良い影響」を与える事実も忘れないでください。みなさんが幸せになるため、健康になるためのお手伝いをするのが今の私の天命である。そう考えて日々を過ごしています。
これまでも何回も言ってきましたが、
『正しい姿勢で1日を過ごし、1日に必要な栄養を取り続ける』。
この重要さを何度でも訴えたいのです(しつこくてスミマセン…)。
実にシンプルな原則ですが、私自身がこれを守り続け、みなさんにもお伝えしつづけることで、ママサロンに通われるお客様の健康にも貢献できています。
健康であるからこそできること、健康であるからこそ防げること、健康であるからこそ選べることがたくさんあると思います。
臨床経験わずか12年の若輩者ですが、リハビリテーションの本質はそこにあり、そのお手伝いをすることに理学療法士としての僕の存在意義があります。
皆様の様々な『想い』に応えられるよう、これからも日々精進していきたいと思います。
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